匂いの記憶

厚くかかった雲

そこから漏れる光

隠れ隠れ見える淡い水色の空

キカイから聴こえる声

リズムを刻む指先

歌うことを忘れたとんがり帽子


世界が終わったのが

昨日のことのように感じる

昨日は春の匂いがしたのに


救えなかった友を

心配する弱い僕

恐る恐る覗く弱い灰色の顔

本の上を走る影

響くパイプオルガンの低音

電線に重なる十字架に祈りを


髪を短く切った君は

大切なものを失い捨てた


嫌なことを思い出すために

イヤホンを手に取る

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